君色の音と私の恋
手に持った袋からCDを差し出す間瀬君。
「受け取って」
「え?」
「お詫びって言ったら佐藤さん嫌がるかもだけど、どんな理由をつけても、このアルバムを渡したかった。俺が好きな曲なんだ」
アルバムの表紙にはアルファベットの文字。
「このアルバムを聴いてたら、佐藤さんの顔が頭によぎった。生も死も静かに受け止めるみたいな。悪い意味じゃなく、周りに溶け込まない。佐藤さんとこの曲が重なって、どうしても届けたかったんだ」
汚いものなんて何も知らないみたいな澄んだ目で、真っすぐに私を見る間瀬君。
誘われるようにアルバムを受け取ると、間瀬君はホッと息を吐きだした。
「そのアルバム、押しつけじゃなく生きる意味を教えてくれる。最高の逸品なんだ」
そう言ってCDをレコードショップの袋に入れなおすと、私にくれた。
「またね、佐藤さん」
『なんで休んだの?』も『明日は学校に来る?』も聞かないまま、間瀬君は帰って行った。
袋を開けると、さっき見たアルバムと新品のビジューが連なったストラップ。そして間瀬君のメアドと電話番号が入っていた。
それらを確認して、両手でギュッと袋を抱きしめて家に入った。