君色の音と私の恋
慌てて教室に取りに戻ると、間瀬君が一人、自分の席に座っていた。
「何してるの?」
そっと声をかけると、「ん?」って顔をして、つけてたヘッドホンを外した。
「まだ帰ってなかったの?」
「忘れ物取りに来た。間瀬君は?」
「音楽聴いてた」
そう言うと、間瀬君はヘッドホンを私に向かって差し出した。
「この前、佐藤さんにあげたCDと同じ人が歌ってる曲。この歌、好きなんだ」
真っすぐな瞳で「好き」っていう間瀬君。
自分に言われたわけじゃないのにドキドキする。
ざわめく胸を誤魔化すみたいに目を逸らしてヘッドホンを受け取ると、それを耳に当てた。
鼓膜を直に震わすのは、ガラスみたいな透明なメロディー。
その音の美しさに、目を閉じて聞き入る。
瞼を開き、ヘッドホンを外した。
「綺麗だね」