君色の音と私の恋
頭が真っ白になって、言葉が出ない。
ずっと間瀬君の夢だったことが現実になるんだから、ちゃんと「おめでとう」って言わなきゃいけないのに、心が凍り付いて何もできない。
プロの歌手になる。それは私との距離が離れてくってこと?
もう、こんなふうに2人で会えないってこと?
不安に揺れる瞳で間瀬君を見上げる。
「プロデビューって言っても、今すぐじゃないんだ。まずはボイトレとダンスレッスンを受けつつ小さいステージで経験を積んで、そこから正式にプロになる。けど忙しくなるから、あまり学校には来れなくなる」
間瀬君は、手を伸ばして私の頬に触れた。
「不安なんだ」
「大丈夫だよ。間瀬君なら、絶対に大丈夫」
気の利いた言葉が思い浮かばなくて、芸能界のこととか、間瀬君の歌声とか、何も知らないのに大丈夫しか言えない。
どうにかして間瀬君の不安を取り除こうと思って、中身のない言葉を一生懸命に並べていると、
「心配なのは、佐藤さんのことだよ」
間瀬君は、茶色い瞳で私の目を覗き込んだ。