君色の音と私の恋
東京駅で新幹線を降りると、本当は真っ直ぐに、今日から住むことになるマンションに向かうつもりだった。
けど大きなスーツケースをゴロゴロと押しながら歩いたのは、さっきまで間瀬くんがいたであろうラジオ局のブース前。
ガラス張りのブースの中には、もう別の人が座っていて間瀬くんはいない。
「そうだよね」
番組が終わって大分経つのに、いるわけないか。
しゅんとしてブースに背を向けたとき、
「佐藤さん?」
5年間、焦がれ続けた声がした。
懐かしいなんて一言では言い表せないくらいの感情が、
間瀬くんと過ごした時間。間瀬くんに会えなかった日々と共に溢れ出す。
目の前には、焼けつくような痛みを抱きながら、恋い焦がれた人。