君色の音と私の恋
揺るがない君(竜也)
-side tatuya-




「お前、よく平気で佐藤と話せるな」



友達の隼人が感心したように言った。



「あいつ、いっつも俯いて本読んでて不機嫌そうだし。暗くね?」



もう一人の友達、佑介が言った。



「そうか?別に話した感じ、普通だったぞ」



何でもない風を装って返事をしたけど、佐藤さんのこと、本当は入学した当初から気になっていた。






入学式当日、受付で渡された名札を落として探していると、



「もしかして……間瀬竜也(ませたつや)くん?」



遠慮がちな声がした。



振り返ると、肩で綺麗に髪を切りそろえて、真っ新な制服を着た女の子が立っていた。



彼女の手には、探してた俺の名札があって。



「それ、俺の」



そう言うと、彼女は無表情のまま名札を俺に差し出した。



「入学当日に落とすなんて間抜けね」



嫌味ですらない淡々とした声。



「もう落とさないでよ」



そう言って、立ち去ろうとする佐藤さんに「ありがとう」ってお礼を言うと、



彼女はびっくりしたような顔をした後、花が咲くみたいに笑った。



その笑顔を見た日から、ずっと佐藤さんのことが頭から離れなかった。




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