君色の音と私の恋
ボールを彼女の顔面にぶつけたときにはヤバいと思って焦った。
どうにか許してもらいたくて、けど気の利いた言葉が思い浮かばなくて。
ポケットに手を入れて、たまたま入ってたガムを差し出して、あっさり断られたときは死にたいくらいへこんだ。
脳内大混乱のまま携帯のストラップを渡しながら、これも断られたらどうしよう?って、不安だった。
彼女が受け取ってくれた時、安心して泣きそうだった。
中学まで、そこそこモテた。
高校に入ってからも、女子からはちやほやされてる自覚はあった。
ボールが当たったのが他の女子なら、こんなにも慌てない。
焦ったのも、混乱したのも、泣きそうになるくらい安堵したのも、
きっと相手が佐藤さんだったから。
俺がずっと付けてたストラップが、彼女のスマホで揺れてるとこを想像するだけで、頬の筋肉が緩む。
「気持わりぃーな。何にやけてんだよ竜也!」
からかう隼人に本気でボールを投げつける。
「うるせー」
グラウンドでじゃれあいながらも、心の中は佐藤さんのことでいっぱいだった。