この先の君を見るために
不思議な部屋
~これから話す出来事は、私が今よりずーーっと若かった頃の話~
~私ととある女性との、短くて長い話...~
ほこりは積もり、テーブルに置いてあるランプの光がついているだけの、少し薄暗い感じの部屋。
そんな部屋の真ん中においてある椅子に座り、昔話を語ろうとしている老人は、手も顔もしわくちゃで、長い間ほっとかれていたと思われるヒゲは白く染まっていた。
~あれはちょうど高校1年生になったばかりの頃じゃったかのぉ~
この部屋はおそらく書斎だったのだろう。壁にはビッシリと本がならべられていて、それでも収まりきらない本が大量に床に積まれていた。
~あの頃、私には片思いの女の子がおった。しかし私は、その娘に思いを伝えることが出来なかった。~
テーブルに置かれている写真立てを悲しげに見つめる老人、
老人が見つめるその写真立てには1人の女性が写っていた。
~もし今も生きていたら...きっと今よりもっといい人生があったかもしれない~
そう呟くと、老人は少し遠くを見るように目線を移して、再び昔話をし始める。
老人が語り始めると、窓の無い部屋には、感じるか感じないか程の風がスゥーーーと老人を囲むようにしてまいたった。