この先の君を見るために
絶世の美女
浅野 翔。(あさの かける)15歳。
夢は平和に暮らすこと、趣味は日常をただ普通に過ごすことです。
そんな俺は、二週間前から新しい変化をとげました。
そう、高校生になったのです。
でも変わったのはそだけじゃない。登下校がバスになった、給食が無くなりお弁当を持っていくし、学校には学食がある、友達が...減った。
バスの後方に座る俺は、ため息を突きながら窓の外を見つめていた。
よく漫画の世界などでは、初日から遅刻して、急いで学校に向かって走っていると曲がり角などで絶世の美女とぶつかりそこから恋が始まる。なんてストーリーが多いと思うが、
俺は初日から遅刻もしてないし、それ以上に学校で新しい友達すらろくにいない。
そして俺は、入学して3日も立たないうちに、高校への全ての憧れを無くしたのだった。
でもそんな俺にいい変化が一つだけあった。
バスが停止すると、入口のドアが開かれ、俺の目線がバスの入口に集中する。
バスに乗ってきたのは、絶世の美女とまでは行かないのかもしれないが、鼻先が整っていて、口元は可愛らしい薄く塗られたピンクの口紅が目立ち、目元は涙袋と大きめの瞳が輝いていて、しているかしていないかの薄い化粧が、その人の性格を表している。
俺にとっては絶世の美女だった。
そして、その絶世の美女が俺に向かって微笑みながら歩いてくる
「浅野くんおはよ。今日も会えたねっ」
「おはよう。」
笑いながら挨拶をしてくれる彼女に、俺は少し鼻の下をのばしながら返事をした。
彼女は清水 爽香(しみず さやか)さん。偶然にしてはすごい事だが、登下校のバスがたまたまどっちも一緒の同級生だ。
同級生といっても学校は違って、彼女はあと5つ先のバス停で降りてしまう。
なぜ学校も住む場所も違う美少女と俺が知り合ったのかと言うと...
入学して間のない頃、俺がバスに乗って、2つ過ぎたバス停から乗ってくる彼女を見た瞬間一目惚れをしてしまった。だけど乗るバスが同じなだけしか接点のない俺らは、何日も会話のすることなく同じバスに乗っているだけだった。
俺はずっと彼女を見つめる事しか出来ないでいたのだ。
だけどある日、下校中のバスで、俺が変わらず彼女に目を奪われていた時だった、
彼女はバスを降りる際にハンカチを落としていったのだ。
俺は躊躇しながらも右手にハンカチを握りしめ、彼女を追いかけてそのバス停を降りた。
それからはお互い自然にバスでは隣同士の席にすわり、5駅分の間だけちょっとした会話をする日々が続いている。
これが二日前の出来事だ。
「ねぇ、浅野くんは夢とかそうゆう感じのものって持ってる?」
不意の質問に俺は動揺して答えられなかった。
いつものバス停につき、彼女は俺の答えを聞く前に降りて行ってしまった。
ああ、今日も連絡先きけなかった。
ちょっとした後悔を抱きながら俺も次の駅で降り学校に向かった。