この先の君を見るために
駅からバスに乗る。この時俺は不自然に周りをうかがっていた。
携帯の日付も、駅員にたずねても、今日の日付は10日前で、誰も今日が10日後だと言うものは居なかった。
バスの中は大体いつも同じで顔ぶれで、今日が10日前か先か確認できる人は居なかった。
後は、2つ先の駅で彼女がこのバスに乗ってくるかで判断するしか手段は無いようだった。
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時間はあっという間にに過ぎ、まだ心の準備が出来る前に例のバス停が近づこうとしていた。
バスが停止して入口のドアが開く、
俺が恐る恐るそこを見ていると、彼女は何のためらいもなく、昔と変わらずバスに乗ってきたのだ。
驚いた。死んだはずの人間がこのバスに乗ってきたのだから当たり前と言えるが、その時やっと、今日が10日前だということに実感が湧いたのだ。
よし、やるか。
そして俺は走っているバスの中、座っていた腰を上げると彼女の元まで足を進めた。
朝からずっと考えていた。もしあの日に戻れたなら、俺にしてあげられることは何か、それが現実になってしまったのだから何か行動を起こさなければならないとと、
そして俺は今日、本当は帰りに接触するはずの俺等を、行きのバスで僕から何の前触れもなく話しかけるとこを決意したのだ。
大丈夫、俺は彼女と少しの間だけだが仲良くなれたのだから。
彼女とはすぐに打ち解けられた。だから俺が今話しかけたってきっと直ぐに仲良くなれる。
まず、早めに連絡先を交換した方がいいと考えた俺は、この手段を選んだのだ。
そして、自分に大丈夫と言い聞かせた後に勇気を振り絞り清水さんに声をかける。
「あの、すいません。清水さんですよね?俺、毎日同じバスに乗っている浅野といいます。もし良ければお話しませんか?」
彼女の表情が酷く引きつり、「ごめんなさい」と一言いって次の駅で降りていってしまった。
『バスの走行中は、危険ですので~席に座ってお待ちください。』
おそらく、俺が彼女と会話もしてないのに、名前を知っていたことを不気味がられたのだという事を自覚はしていた。
放課後、その日の帰りのバスに彼女が現れることは無かった。
それ以前に、あれから彼女とバスで会うことは2度と無くなってしまったのだ。
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あれから5日経った。
そう、俺はなにも出来ないまま彼女はこの世を去っていった。
しかし、不可解な点が一つある。
彼女はハンカチを落とした3日後に事故にあったのだ。しかし、俺がどれだけネットやニュースで探しても、清水 爽香の報道はされなかった。
そして彼女がテレビに出たのは、ハンカチを落した5日後の今日にズレていたのだ。
俺はパソコンをシャットダウンさせるとベッドに倒れ込み、悲しみに溺れながら眠りについた。