君の未来を愛していこう
「……別に、未来のことはどうとも思わないよ」
拓人の目をしっかり見たまま、はっきりとそう言った。拓人が息を呑んだのがわかる。それからふと、無理矢理作ったような顔に変わった。
「……そうだよな。能天気なバカは、何も思うわけねぇよな、うん」
「ちょっとー、勝手にひとりで納得して、話を終わらせないでくれるかな?」
冗談を言うときの口調で言った拓人に、私もいつものように軽く怒った口調で、あくまでも軽く言葉を返した。
……それにしても失礼だな、能天気なバカだなんて。
これでも私、当初の成績では無理だと先生に断言されてしまった県内一偏差値が高い高校に、猛勉強の末に無事に合格した努力の天才(自称)なんですけどね?
こめかみをぴくぴくさせていると、拓人の顔が曇った。だから私は続けようとしていたことを慌てて言う。
「……別に、何ひとつ不安がないってわけじゃないよ」
私だって、拓人と同じ。この先に何が待っているかなんてわからない。
新たな道を歩むことを少し楽しみにしている一方で、今まで歩いてきた道から外れて、新たな分岐点の先の見知らぬ道を歩くことが少し怖かったりもする。
――ただ。
「ただ、考えないようにしてるだけ。私、考え出すと悪い方向の未来ばっかり考えちゃうからさ。どうなってるんだろう、とか、どんな未来が待ってるのかな、とか。あんまり、考えないようにしてる」
ある意味楽観的すぎる考えだし、能天気なバカというのもあながち間違いではないかもしれない。でも、私はそれでいいんじゃないかって思ってる。
まだ確定しているわけでもないのに無駄に難しく考えて、勝手に悪い未来だと決めつけてそれに怯えるよりも、ずっといい。