君の未来を愛していこう
今私達が生きている時間は、未来の欠片。それをどう集めて、どうやって磨いて、どんな形に合わせていくのかも、その人次第。
……そう、だからこそ。
自分の未来を愛せば愛するほど、きっとまた輝いていく。今過ごしている時間も全部ひっくるめて大切にすることができたなら、その努力はきっと裏切らない。
目指した未来の欠片を失わなければ、きっと――。
「里央の言うような未来になるとといいな」
少し俯き加減だった拓人が、桜が舞う青い空を見ながらそう言った。
その横顔には笑みが浮かんでいる。澄み切った春の空気のように清々しい笑顔だった。この拓人の表情を見ていたら、きっと拓人の未来は明るいと思えた。
「……大丈夫。拓人なら、どこに行っても大丈夫だよ」
私と……君が目指す未来は違うけど。君が隣にいない未来を歩いていく自信は、まだ完全に芽生えてはいないけど。
前を向くって決めたから。私は私の道を精一杯進むと決めたから、どうか君も、そのまま精一杯進んでいって。ずっと、君の未来が輝くように。
拓人に背中を向けて、門出を祝福する花吹雪のように舞っているピンクのひとつに手を伸ばした。
さっきまでは、手にかすることもなく逃げてしまっていた花びら。だけどそっと手のひらを閉じて胸元に戻した拳を開くと、そこには確かにあった。
地面に落ちて汚れるなんてこともなく、綺麗なままの願いの欠片の桜の花びらが。
「ねえ、拓人! 見てよ! 桜の花びら掴めたよ!」
「えっ、まじか。里央がおまじないがどうとか言ってたやつだろ? すげーじゃん」
目を丸くして拓人がこちらに寄ってくる。
手のひらの上の花びらを見せれば、頬をゆるめて笑ってくれた。