ボーイズロード ―first season―
一瞬だけ、油断しそうになった。名前を呼ばれたのなんて何年ぶりなんだろ。

俺の腕の中で茜が震えてるのがわかる。


それがかえって不安になった。

だけどもう引き返せない。それすらも抑えつけるように、抱きしめた腕にはさらに力が入る。


どうしよう。まさか抱きしめてしまうなんて。

だけどずっとこうしていたい気持ちもある。

今だけ頼むよ。このままでいさせてもらいたい。


体全体が脈を打つ。茜にも俺の心臓の音が聞こえているのかもしれない。


「お前、俺のこと嫌いなんだろ。なんで抵抗しないんだよ」

なぜかかすれて出てしまった声に、自分で恥ずかしくなる。

< 101 / 406 >

この作品をシェア

pagetop