ボーイズロード ―first season―
「……おい」

茜に向かって声をかけたけど、聞こえていない様子だ。

「おい、ここ座れって」

やっとこいつも俺に気づいたみたいだけど、戸惑った表情で首を振る。

まったくもう、世話焼ける。


「混んでんだから、座っとけって」

身を乗り出して茜の腕を軽く引いた。

茜は一瞬だけ掴まれた腕を引っ込めたけど、周りをさっと見渡してからようやく観念して、俺の隣に腰を下ろす。

膝の上にかばんを置き、単語帳を出していた。


俺もまたノートを眺めるが、隣の存在を感じると内容が頭に入ってこない。

自然と身体の右側に神経が集中する。

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