ボーイズロード ―first season―
横目でさやかを忍び見た。

少しだけ湿った瞳に赤や緑の光が映り込む。さやかは何も言わずに、ただ花火を眺めていた。


その表情からは何を思うのかわからない。

ただひとつだけわかっていることは、さやかの寂しさを紛れさせるために連れてきたはずなのに、ちっともそれを果たせていないことだった。


「ね、その髪の毛、自分でやったの?」

「うん、慣れないから変になっちゃったけど」

「そんなことないよ」


すごくかわいい。

でも浴衣も髪型も、今日会えるかわからない先輩に見てもらいたかったからなんだよね。


「なんかさ、頑張ってたんだね、さやか」

「え、なにが?」


髪の毛を指差すと、ほんの少しはにかんで毛先を指に巻きつけていた。

また、そんな仕草も背景に花火があるせいか特別に見えてしまう。

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