ボーイズロード ―first season―
「今優しくされるのって、なんだか沁みるよね」

胸の奥がきゅっと切なく悲鳴をあげる。


別にこれは優しさなんかじゃないんだ。さやかじゃないと俺は抱きしめることなんてできないから。

さやかの気持ちとは裏腹に、俺は俺のためにずっと離したくないって思っているんだ。こんな時じゃないときっと抱きしめることなんてできない。


「さやかは無駄って言ったけど、俺は浴衣、かわいいって思ったよ」


たくさんの気持ちが混ざるなかで、それだけは伝えられることができた。


さやかが一瞬顔をあげた。

でもまた俺の胸の中に顔をうずめて「ありがと」って小さくつぶやいた。


その言葉が俺の服を通り越して、身体に染み込んでいくのを感じた。

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