ボーイズロード ―first season―
案外、梅木のことはすぐに見つけることができた。

下駄だからそんなに遠くには行けなかったんだと思う。河川敷の土手の上をゆっくり歩いていた。

肩をつかんで呼び止める。梅木が驚いて小さな悲鳴をあげた。


「びっくりした……なに?」

「お前、琢のこと見たんだろ」

「……賢太くんは琢ちゃんのこと知ってたの?」

「いや、俺もさっき見て知ったんだ」


「……泣いてるとでも思った?」


図星をつかれて一瞬だけ怯む。だけど梅木は泣いてなかったんだ。


「なんだか素直に泣けなくてさ。

あの彼女も吹奏楽部の子で、二人を見た瞬間にお似合いだなって思っちゃった。


考えてみたら蒼は琢ちゃんを好きでも、なんにも努力してなかったから。

いつ、こうなってもおかしくないんだよね」


梅木は俺から目を逸らしつつ、薄く笑いながら人差し指でほっぺたを掻いていた。

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