ボーイズロード ―first season―
「えっと、賢太くんの言ってることよく分かんない……」

「……嘘、つくなよ」


後悔の気持ちがありながらも、ここまできてしまったらもう自分では止めることができない。

もう一度、今度はもっときつく抱きしめた。


「なんで……賢太くん、苦しいよ」

言葉はもう出てこない。かわりに、自分の胸に梅木の顔をぐっと押し付ける。

心臓の音を聞かせたら、言葉にできない気持ちも全て伝わる気がしたから。


「蒼、琢ちゃんのことばかりで……

ごめん、気づいてあげられなくて」


体を離してから梅木の頭を一度だけ撫でる。一瞬だけ恐る恐る俺のことを見上げたけど、またすぐに照れくさそうにうつむいていた。


「……いや、こっちこそ悪かった。俺もなんだかブレーキ効かなくなっちゃって。

混乱するよな、琢のこと見たあとにさ」

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