ボーイズロード ―first season―
いつの間にか8時になっていて、花火が次々と夜空に打ち上がる。

赤や緑の光でできた大きな花が、冷えた空によく映えていた。


きれいだな。花火なんて別に初めてじゃないのに、こんなにきれいだなんて思ったことがない。

隣に石川がいるってだけで、不思議なんだけど全部がきれいに見えてしまう。


「若ちゃん、ありがとね」

石川が花火を眺めたまま、ふと独り言のようにつぶやいた。


「私、ずっと若ちゃんにお礼を言いたかったんだ」

「お礼?俺に?」

「……うん」


これで石川とは最後みたいな雰囲気になってしまうのは、俺の気のせいなんだろうか。

もう席が離れてしまうから?それってこうして石川と話すことはもうないみたいじゃん。

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