ボーイズロード ―first season―
「若ちゃんごめん、もう帰らなきゃ」

その声をきっかけに、自然と手が離れていった。


隣町に住む石川は、帰るのにも電車に乗らなくてはならない。駅で石川の兄ちゃんと待ちあわせをしているらしい。


だけどまだ一緒にいたい。帰りの電車をもう一本遅らせることはできないの?

つい本音を言ってしまいそうになって、ぐっと歯を食いしばる。


もし俺らが大人なら、何時間だって一緒にいることができるのに。


「わかった、駅まで送るよ」

「大丈夫だよ。歩いて10分くらいだし」

「いや、俺が心配なんだ」


もちろん夜道の心配もあるけど、それよりも俺が少しでも石川と長く一緒にいたいだけ。


駅までの道のりはくだらない雑談をしていたけど、その中で手を握ることはもうできなかった。

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