ボーイズロード ―first season―
腕だけ伸ばしてさやかの頭をぽんぽんと触ってみる。自然に振る舞うことがうまくできなくて、多分ぎこちなくなっていたと思う。

それでもさやかは笑っていた。だけどその表情にはやっぱり力がない。


そんな顔するなってば。もうこれ以上見てられないんだけど。


「……ねえ、俺じゃだめなの?」

「え?」


あれ、今、俺なんて言った?こんなこと全く言うつもりなんてなかったのに。自分の知らないところで勝手に言葉が出てきてしまった。


「いや、ごめん。なんでもないんだ」

「そうだよ。琢哉はあたしのことなんて、好きじゃないって言ってたもんね」


そうだよ、自分で言ったんだ。さやかのそばにいたいがためについた嘘。

一度嘘をついたら貫き通さなくてはならないのに、今はそれが枷となっているせいで、さやかを慰めることができないんだ。

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