ボーイズロード ―first season―
そんな時に教室のドアが突然開いた。


「え……石川?」


しんと静まり返った教室の中で、私の鼻をすする音と、若ちゃんの声だけが響いていた。


「えっと、そこ賢太くんの席だよね……」


暗いせいで、若ちゃんが今どんな顔をしているのかはわからない。


「ごめん、俺、弁当箱取りに来ただけだから」


若ちゃんは早足で自分の席に向かい、弁当箱を回収して教室を出ようとした。不自然な足音とか声の感じで動揺しているのがわかる。


「じゃ、じゃあ石川、また明日」

「あっ……!」


言いかけてから、慌てて自分の口を抑える。


危なかった……


若ちゃんに『行かないで』って言いそうになったんだ。引き止めてどうするつもりだったんだろう。

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