ボーイズロード ―first season―
一瞬立ち止まった若ちゃんは少し間をおいて、教室の中へ引き返してきた。
そして私の座っている、つまり賢太くんの前の席の椅子を引いて、横向きのままでどさっと座った。
「なんで……?」
「今さ、俺のこと引き留めようとしなかった?いいよ、石川の気の済むまでここにいるよ」
暗闇にもう目はすっかり慣れていた。そしてその中で、こっちを見ずに力無く笑った若ちゃんの横顔が見えた。
若ちゃんは軽くうつむいたまま、指のささくれをいじっている。その指先は心なしか震えているように見えた。
今日はいつものカーディガンではなく、彼にしては珍しく学ランを着ていた。
傷つけてしまったんだ……
丸くなっている背中が、若ちゃんの気持ちの全てを物語っているように思った。
そして私の座っている、つまり賢太くんの前の席の椅子を引いて、横向きのままでどさっと座った。
「なんで……?」
「今さ、俺のこと引き留めようとしなかった?いいよ、石川の気の済むまでここにいるよ」
暗闇にもう目はすっかり慣れていた。そしてその中で、こっちを見ずに力無く笑った若ちゃんの横顔が見えた。
若ちゃんは軽くうつむいたまま、指のささくれをいじっている。その指先は心なしか震えているように見えた。
今日はいつものカーディガンではなく、彼にしては珍しく学ランを着ていた。
傷つけてしまったんだ……
丸くなっている背中が、若ちゃんの気持ちの全てを物語っているように思った。