rain



暁と別れてから何時間たったのだろう


止まない雨、空はまだどんよりとしていた




「ねぇ君、大丈夫…?」




その声にハッとして振り返ると、背の高い男性が私に傘を差し出して立っていた




「あの… はい、大丈夫です」




こんな酷い顔誰にも見せたくなくて慌てて俯く


俯いた先、私の目に映ったのは
濃いグレーのスーツを着て片手にビジネスバックを持った人


ハンカチあったかなってビジネスバックを脇に挟んでポケットを漁っている




「あの、大丈夫ですので…」




そう断りを入れた瞬間




「あれ? 暁くんの彼女さん…? たしか貴子ちゃんだっけ?」


「え? あ… はい…」




名前を呼ばれ慌ててその人の顔を見ると
その人は暁の仕事仲間の雅紀くんだった




「何? 暁くんと何かあった?」




私の顔を見て察したんだろう
心配そうに私の顔を覗きこむ雅紀くん




「あ… いえ、傘忘れて… 
家に帰る所なんです」


「そうなの?」


「はい、お気遣いありがとうございます
すみません失礼します」




ペコリと頭を下げ歩きだした瞬間




「ね、ちょっと待って!」


「はい…?」




雅紀くんにグイッと手を掴まれた




「貴子ちゃん、ずぶ濡れだよ? どこかで着替えよう、これじゃ風邪ひいちゃうよ?」


「あの… ぜんぜん大丈夫です
ここから家近いので…」




雅紀くんに断りをいれると


雅紀くんは私の手を強く引っ張り腕の中に閉じ込めた



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