rain
ミナミに後押しされ俺は傘もささず
雨の中、貴子を探し走りまわっていた
「…っ、どこに行ったんだよ!!」
こんなにイラついたのは初めてだった
でもそれは貴子のことでイラついてるんじゃなくて
貴子を悲しませていた自分に相当イラついていた
「…クソッ!」
公園の中にある大きな木の下で立ち止まると
ブーンと、ポケットの中で携帯が震えた
「メール?」
慌ててメールを開くと
それは職場の同僚の雅紀からだった
“暁くんの大事にしている子猫ちゃん拾ったよ?
映画館の前にある橋の上、早く来ないと俺が食べちゃうぞ~♪
雅紀”
「チッ、何が“食べちゃうぞ~”だよっ!!」
携帯を閉じ、俺は全速力で貴子と雅紀のいる映画館へ向かった