rain
意を決してかけた電話を切ると、私は暁のマンションに向かって歩きだした
シトシトと、降り続く雨
私は自分の傘は持たず、暁に借りた傘を開かず返しに行くと決めていた
初夏の雨でも体を濡らすと冷えて寒い
暁のマンションまでは近かったけど、私はもうびしょ濡れだった
すれ違う人の視線が痛い
だけど、そんなこと気にせずに私はどんどん歩いた
さっきの電話…
暁の声の向こうで聞き覚えのある女の人の声がした
たぶん暁は、もう私の事を好きじゃない
止まない雨
この雨にうたれて心まで裸になれたら
違う私になれる…?
違う明日が来る…?
今から未来へ、一歩踏み出せるだろうか?
暁、最後にチャンスをあげる
どんな理由でもいい、嘘でもかまわない
マンションに着くまでに“私が好きだ”という言い訳を考えて
でもね、その言い訳で私の心が動かなければ
いつもは思ったことをすぐに口にする暁だから
本当は私の気持ちを考えてくれる優しい暁だから
あなたが苦しむ前に…
私からあなたを楽にしてあげる