rain
走り去っていく貴子の姿
なんで俺こんな所で突っ立ってるんだ…?
なんで追いかけない?
“私がどんなに不安だったか知らないでしょ?”
「知らなかった…」
“泣いてた事…知らないでしょ?”
「俺のいない所で泣くなよ…」
“言える訳ないじゃない!! 暁が好きだから…”
「俺も、どうしようもないくらい貴子のこと好きなんだぞ? 何だよ別れようって!!」
俺には貴子しかいない
貴子以外、考えられないんだよ
「だったら早く追いかければ?」
後ろから聞こえてきた声
その声は俺の部屋で待っているはずのミナミだった
「あの子、誤解してるよ? いつもの暁らしくないじゃん」
「いや… ちょっとこんな展開になるなんてびっくりしてさ…
つーか、貴子の涙に弱いんだな、俺」
力なく笑うと
「早く行ってあげな!」
半分怒り気味でミナミが俺に何かを投げ渡す
「今しかないよ?」
「…あぁ」
俺はソレをポケットに突っ込み
貴子から受け取った傘をそのまま持って走りだした