HEAD/phones~ヘッド・フォン~
「やめろーーっ!!」
ノブオは陽助に向かって叫んだ。そして、部屋の中に駆け入ろうとしたが、陽助の奥に見た女の姿を見て足が止まる。
「…なんだ…あれは?…陽助?!」
ノブオの後から階段を上がってきた健太郎は愕然とした。
陽助は突然の声に女を抱きしめたままゆっくりと振り向く。その瞬間、陽助の頭にはめられたヘッドフォンがするりと外された。
すると、陽助は魂が抜けたようにその場に倒れてしまった。その後ろから喜びで引きつった顔の女が姿を現す。
「遂に…遂にやったぞ!!」
女は手に入れたヘッドフォンをまじまじと見つめ、狂喜の声を上げている。両目からは再び黒い涙が流れ始め白い顔を黒に染め、背中の黒い霧の翼が大きく広がり部屋中でうねっている。
「なんだよ…あれ…??」
健太郎は呆然と立ち尽くしているノブオに聞く。
「…すげぇ…すげぇよ!神だ!あれが、俺達の創造の神の姿だ!!」
ノブオは興奮のあまり身震いしていた。
「創造の…神?」
健太郎はおぞましい女の姿を見ながら聞き返す。
「そうだ!彼女が本当の世界に連れてってくれるんだ!」
目に涙を浮かべ、ノブオは女の方へゆっくり歩み寄っていく。
「ノブオ!」
健太郎は叫んで止めようとするが、ノブオの耳には届かない。
「これで俺は…あなたの世界に行けるんだよな?」
それを聞いた女は喜びで歪んだ口を微かに開いて答えた。
「バカなやつ」