HEAD/phones~ヘッド・フォン~

「優!!」

健太郎は叫んび窓に急いで駆け寄る。

「優ーーっ!!」

窓から身を乗り出してもう一度大声で叫んだ。
その後ろでは意気消沈したノブオが座り込んでいた。

落ちて動かない優にもう一度叫ぼうとしたら、優はゆっくり立ち上がった。窓から見ていた健太郎はホッとしたが、優の後ろに立っている女の姿を見て驚いた。

「優!後ろ!」

健太郎は叫んだが優は慌てる様子もなく腰をさすっている。健太郎はその様子をハラハラして見ていたが、女はすぐにその場に倒れた。その女の頭にヘッドフォンがはまっていてその事が気がかりだったが、健太郎は後ろを振り返ると陽助を抱き起こした。

「陽助!しっかりしろ!」

健太郎の声に陽助の目はうっすらと開いたが、すぐに閉じた。仕方なく腕を腰に回し抱き上げると、部屋の外へ向かって歩き出した。そして、ノブオの前まで行き言う。

「立て!ノブオ!下りるぞ」

しかし、ノブオは何やらぶつぶつ言いながら動こうとしない。健太郎はそんなノブオの頭を思いっきり叩くと部屋を出て階段の方へと向かった。

足元は暗かったが階段を踏み外すことなく下りていく。ただ、陽助の足に力が入っておらずダラリとしていたので少し引きずるような形になってしまった。
そうして途中からは落ちていた懐中電灯を拾い、足元を照らしながらなんとか建物の外に出た。

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