HEAD/phones~ヘッド・フォン~
外はもはや建物の中と同じくらいの闇に包まれていた。懐中電灯で辺りを照らすと、優が女を抱えて草の中から出てきたのが見えた。健太郎は陽助を抱え直すと優の方へと歩いた。しばらくすると建物からノブオが現れ、足を引きずるようにして健太郎の後についてきた。
「大丈夫か?優」
「ああ」
優はまだ腰をさすっている。
「そのヘッドフォン…」
健太郎は女の方を見た。
「ああ」
優はそれだけ言うと、持っていたもう一つのヘッドフォンを健太郎に投げ渡した。健太郎は片手でキャッチすると、女のはめているそれと見比べた。優に渡されたものは血管のように気味の悪い筋がいくつも浮き出てモゾモゾと動いている。まるで生き物のようだ。
「何だ、これ…?」
「それはこいつが持ってたやつだ」
優は女を地面に寝かせながら言う。
「確かに…普通じゃないよな。で、そっちが陽助のやつか?」
「ああ。そして、二つで一つ」
「それ…どういう意味なんだ?」
「この二つのヘッドフォンはそれぞれ単体では作動しない」
「作動って?」
「二つが融合する事によって作動、すなわち力を発揮するわけだ」
「力を、発揮…」
健太郎には何の事だか全然分からなかったが、そんな事どうでもいいような気もしていた。