HEAD/phones~ヘッド・フォン~
「陽助は大丈夫か?」
優は女から陽助へと視線を移した。
「あ、うん。気を失ってるだけみたい」
健太郎は陽助の顔をチラリと見たが、すぐにまた女の顔に目を向けた。
「そいつは死んだのか?」
「…かもな」
健太郎はノブオの事が気になり後ろを振り返る。ノブオは信じられないといった様子で頭を振ったりしている。
「ノブオ!」
優は叫んだ。
「お前…痛ぇ!」
その声で健太郎は優の傷の事を思い出した。
「優の方こそ大丈夫なのか?!」
「ヤバいかも…まだやりたい事いっぱいあるのによ」
「なんか…大丈夫そうだな」
「お前…これで死んだら絶対とり憑いて呪ってやるからな!」
「分かったから安静にしてろよ」
健太郎は陽助を地面に降ろして座り込んだ。そして、しばらくの沈黙の後、誰にとなく言った。
「この女…誰だったんだ?」
すると、優が落ち着いた口調で答えた。
「誰でもないんじゃないか」
「…誰でもない」
健太郎は頭の中で理解しようとしたが、うまくいかなかった。
「俺達とは別の世界に生まれちまった、孤独な存在」
優はつぶやくようにそう言った。
「これからどうする?」
健太郎は優に尋ねた。
「まだ終わりじゃない」
「え?」
「こいつらを送ってやるんだ」
「送る?どこへ?」
「…天国だ」
そう言って優は立ち上がり女を抱き起こそうとした。
「どうするつもりだ?」
「人が死んだら普通は火葬だろ?」