HEAD/phones~ヘッド・フォン~
案の定、今日も鍵は開けっ放しだ。
ノブオは慣れた感じで固いドアを荒々しく引っ張った。部屋の中はカーテンが閉めきられている為か薄暗く、なんとも言えない異臭が外に溢れてきた。健太郎はそんなに頻繁には訪れないので、この異臭にはまだかなりの抵抗があった。
鼻に重くのしかかるような臭いは、カビが原因だろうか?前に畳の下から変なガスが出てきたというのを聞いた事があった。本人曰く、それはガビのせいだと言うのだが、本当のところは分かっていない。人によっては「死の館」とも呼べるのではないだろうか…。

健太郎が遠くから部屋の中を覗き見ると、外から侵入した光が宙に舞う埃をキラキラと輝かせていた。

「お~い、起きろ~」

ノブオは早くも部屋の中に体半分を入れている。慣れというのは恐ろしいものだ。いや、ノブオだから出来る事なのかも知れない。

「起きろー!」

なんの反応もない事に苛ついたのか、そう言って玄関の横にある小窓のカーテンをバッと勢いよく開けた。すると、

「あわわわわ!」

陽の光に照らされた埃まみれの部屋の中から陽助が現れた。四畳半の狭い部屋のほぼ半分を占領しているベッドから転がり落ちる。それにより舞い上がる埃の量はさらに倍増し、視界を埋め尽くす程だった。

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