HEAD/phones~ヘッド・フォン~
「いつまで寝てんだ!」

大量の埃もノブオは平気なようだ。

「あ…、今日は何の授業でしたか?」

陽助はまだ寝ぼけているのか、目が完全には開いていない。

「今日は心理学。もう終わったよ」

健太郎がそう言うと、陽助は申し訳ないような顔で言う。

「ありゃりゃりゃ、それはしまったぁ」

このなんとも言えないキャラクターが憎めず心配でもあった。純真とでも言うのだろうか。部屋は汚れていても心は汚れていない。そのギャップが彼の魅力なのかも知れない。

「ちょっと、顔を洗ってきます」

そう言うと、健太郎達の間をそそくさと抜けて行ってしまった。残された二人は、部屋の中に勝手に上がり込み物色し始めた。
食べ散らかした食べくずや怪しいタイトルのビデオテープや、絵が描かれた紙くずなどが散乱している。それに、奥の壁際にはどこから何の為に集めてきたのか、粗大ゴミ置き場から拾ってきたようなものが所狭しと積まれている。どれも何かの一部分らしく、元の形は分からないが、健太郎は聞く気にもならなかった。

靴を脱ぐと空いたスペースを探して健太郎はベッドの上に座り、ノブオがあさっているのを眺めていた。

「相変わらず、ここはすごいな…」

健太郎は部屋の中をぐるりと見回す。

「まぁな。あいつはどこでだって生きていけるだろうよ」

そういうノブオだってどこででも生きていけるだろ、と健太郎が思っていると、陽助がタオルを首に巻いて戻って来た。
綺麗にすれば結構な男前になるだろうに、もったいない気もする。頭は坊主だけど所々から長く伸びた毛が飛び出ていて、不精ヒゲで、着ているTシャツは襟の部分がだらりと伸びきっている。まるで何日も漂流、あるいは遭難したような姿である。

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