HEAD/phones~ヘッド・フォン~
長かった梅雨も明け、蒸し暑かった空気は暑いだけの空気へと変わり、本格的な夏の到来を感じさせた。アスファルトに一度吸収された熱が再び外へと溢れだし、道の先をゆらゆらと揺らしている。
車の中は冷房を入れているにも関わらず、四人の男の熱気にでなかなか涼しくはならなかった。密閉された小さな空間に閉じ込められたような、そんな息苦しささえ感じた。
「もーダメだ!窓開けるぞ!」
そう言うとノブオは全部の窓を一気に開けた。
すでに山の奥深くに来ているからか、外から入り込んでくる風はとても心地よかった。それに道路脇に長く伸びた木々が大きな陰を作ってくれている事もあって、火照った頭を優しく冷ましてくれた。目を閉じると微かではあるが、風に乗って森林の香りがする。それがより一層の清涼感を与えてくれた。
緑が目の前を次々流れていく。健太郎は全身の力が緩んでいくのを気持ちよく感じていた。こんなに解放的な気分になるのはいつぶりだろうか……。
しかし、逆行する記憶を健太郎は慌てて止めた。
「そういや陽ちゃん、単位大丈夫?」
健太郎は自分を誤魔化すように聞いた。
「やばいですねぇ…」
陽助はいつもの困り顔で答える。
「優にみっちりしごいてもらえば?なぁ、優」
前からノブオが笑いながら言う。
「………」
優はずっと本に集中していて周りの景色なんて見向きもしない。隣でノブオは呆れ顔で見ているが、健太郎はそんな優の姿を最近では少し羨ましくも感じていた。
車の中は冷房を入れているにも関わらず、四人の男の熱気にでなかなか涼しくはならなかった。密閉された小さな空間に閉じ込められたような、そんな息苦しささえ感じた。
「もーダメだ!窓開けるぞ!」
そう言うとノブオは全部の窓を一気に開けた。
すでに山の奥深くに来ているからか、外から入り込んでくる風はとても心地よかった。それに道路脇に長く伸びた木々が大きな陰を作ってくれている事もあって、火照った頭を優しく冷ましてくれた。目を閉じると微かではあるが、風に乗って森林の香りがする。それがより一層の清涼感を与えてくれた。
緑が目の前を次々流れていく。健太郎は全身の力が緩んでいくのを気持ちよく感じていた。こんなに解放的な気分になるのはいつぶりだろうか……。
しかし、逆行する記憶を健太郎は慌てて止めた。
「そういや陽ちゃん、単位大丈夫?」
健太郎は自分を誤魔化すように聞いた。
「やばいですねぇ…」
陽助はいつもの困り顔で答える。
「優にみっちりしごいてもらえば?なぁ、優」
前からノブオが笑いながら言う。
「………」
優はずっと本に集中していて周りの景色なんて見向きもしない。隣でノブオは呆れ顔で見ているが、健太郎はそんな優の姿を最近では少し羨ましくも感じていた。