HEAD/phones~ヘッド・フォン~
いつだったか優と語り合った事があった。というより優の一方的な語りだったのだが。
普段は本に夢中の優も、酒を飲むと本を手放して饒舌になる。健太郎の部屋で飲んだあの時もそうだった。いつもより飲み過ぎた事もあって、聞きもしないのに優の方から次々と言葉が飛んできた。


「俺は教授になる」

そう言い出した優の表情は、なぜか虚ろだった。

「俺は、偉くなりたい…このままで終わりたくない。高校の時から…いや、その以前から俺は周りの奴等が邪魔だった…邪魔でしかたなかったんだよ!何も考えずにただのうのうと生きてる奴等が鬱陶しくてしょうがなかった…」

初めて聞く優の告白に健太郎は少し戸惑った。しかし、そんな健太郎の事などお構いなしに優は話を続ける。

「俺の前をいくつもの人形が、ただの人形が意味もなくふらついてんだ。払っても払っても消える事はない。それどころか増えていくばかりだ…そして、そんな奴等に囲まれていたら次第に不安になっていった。俺はこんな奴等と一緒にいていいのだろうか…?こいつらは俺を道連れにしようとしてるんじゃないか…?そんな事を考え出したら学校に行くのが嫌になった。いや、違うな…怖かったんだ。自分も意味のない人形に思えて…。それからしばらく学校には行かずに考えた…でも、答えなんて出なかった。…そうじゃないな。出なかったんじゃなくて出さなかったのかもしれない。そして…俺は、また人形の館へ戻った…」

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