HEAD/phones~ヘッド・フォン~
優がそんな事を考えていたなんて知らなかった。いつもの優からは想像する事も出来なかったろう。
健太郎が何も言葉を返せないでいると、優の口は再び動き出した。

「…それでもやっぱり俺は考えた。考えずにはいられなかった。どうすればこいつらからの中から飛び出せるかって。そして、辿り着いた答えがこれだ。俺もこいつらと“今は一緒”なんだ。ただの人形なんだ。これからなんだ。これから、俺はこいつらを振り払って行かなければならないんだ。そう自分に納得させた……結局、答えなんてどこにもないんだ…だから、俺は…俺は…絶対偉くなってやんだ……」

優はそう言いながら横になると、すぐに寝息を立てた。その姿は儚く弱々しかったけれど、自分の事を考えると逞しくも感じた。教授になる事が果たして偉くなるという事なのかどうかは疑問だが、僕はこんなに強い思いで生きていけるだろうか?それに僕も人形の中の一つにすぎないのだろうか?優の言うように答えはどこにもないのだろうか?
健太郎は誰にとなく、そう問いかけた。

< 24 / 113 >

この作品をシェア

pagetop