HEAD/phones~ヘッド・フォン~
あれは中学の時の事だ。
入学してしばらくは、それなりに友達も出来て楽しい学校生活を送っていた。自慢じゃないけど成績も結構よくて運動も人より長けていた。しかし、ある日、健太郎が教室に入るとどこか不穏な空気が漂っていた。どうしたの?と聞くが誰も何も言わない。いつもよりよそよそしい友達、教室から出ていくクラスメイト。そして、始まった。
教室のドアが荒々し気に開けられ、茶髪で目つきの悪い他のクラスの五、六人の不良グループが入ってきた。綺麗に並べられた机や椅子を足蹴りにして、健太郎の方へと歩み寄ってくる。周りを見回すと、いつの間にか教室の中には健太郎一人だけになっていた。それで慌てて教室から出ようとすると、いきなり腕を掴まれ引っ張られた。そして、眉間にしわを寄せた顔を健太郎の顔へと近づけて、そいつは言う。

「お前、ふざけんなよ!」
しかし、健太郎には何の事だか分からなかった。

「な、何?!」

健太郎は襟を締め付ける手を外そうとするが、突然の予期せぬ状況に力が抜けてしまっていた。

「クソがっ!」

そいつはそう言うと、健太郎の腹を一発殴った。きっとそいつはリーダーだったのだろう。それを合図に他の奴等も一斉に殴り始めた。健太郎は何がなんだかわけが分からないまま殴られ続けた。そして、反抗する事も出来ずに殴られながら考えていた。

---僕が何をした?なんで僕は殴られてるんだ?やめろ…やめてくれ!

心の中でそう叫ぶが、暴力は止まらない。時間は意地悪くゆっくり過ぎていく。それに沿って苦痛は激しさを増していく。
< 26 / 113 >

この作品をシェア

pagetop