HEAD/phones~ヘッド・フォン~
やがて「な~んだ」と気の抜けた声が聞こえて、衝撃は止んだ。そして、呆気ないといった様子で不良グループは教室を出ていった。健太郎は顔以外の痛む全身をかばいながら立ち上がった。血管が破裂したような痛みが全身を駆け巡ったが、それよりも周りが気になって霞む目で教室を見渡した。まだ誰もいない。

---僕が…どうして?どうして…僕が?

そんな気持ちでいっぱいになると、目から熱い涙が溢れてきた。悔しかった。反撃出来ずにただ殴られる自分が悔しくてたまらなかった。
しばらくして恐る恐る教室に入ってきた友達が声をかけてきたが、健太郎はそれを振り払って教室を駆け出していった。廊下には人が大勢いた。健太郎は誰とも目を合わせないように顔を隠して走った。こんな情けない姿を誰にも見られたくなかった。それにこれが現実だとは思いたくなかった。そして、校舎の裏で健太郎は一人、理由を探し続けた。

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