HEAD/phones~ヘッド・フォン~

次の日から健太郎は少しずつ壊れていった。理由の分からない度重なる暴力に耐え、見て見ぬふりをする友達から遠ざかり、健太郎は次第に孤立していった。毎朝学校に行くのが嫌になり、仮病を使って休む事も多くなった。夜は消えて無くなってしまいたい衝動にかられ、布団の中で涙する事も多くなった。そんな憂鬱な日々が約一年半続いた。その頃には健太郎の精神は硬い甲羅に覆われて、笑う事も出来なくなっていた。見た目には分からなかったかもしれないが、完全に停止していたのだ。考える事も自発的な行動も、健太郎にとっては意味のない事になっていた。
初めの頃は誰かに話そうかとも思った。自分の存在を誰かに認めて欲しかったから。でも、そんな事をしてもどうなるわけでもないと思った。何も変わらないと思った。それに何も出来ない自分を、弱い人間として見られるのが恥ずかしくて、情けなくて、悲しくて、怖かった。すでに周りからはそういう風に見られていたのだけれど……。

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