HEAD/phones~ヘッド・フォン~
結局、健太郎はそのまま中学を卒業し、公立の高校へと進学した。この頃の記憶はほとんどない。高校も自分で選んだのではなく、気付いたらそうなっていたのだ。
高校に入って健太郎は、なぜか少しずつ元の自分を取り戻し始めた。笑う事も出来るようになったし、死ぬ事も考えなくなった。何が作用したのか分からない。きっと環境が変わったせいもあるのだろう。しかし、今もって取り除けない無力感、脱力感は寄生虫のように存在している。まるで当時の自分を名残惜しむかのように体から離れない。それに軽い刺激でいつでもあの頃の気持ちに戻ってしまう。薄い皮を一枚めくれば、弱々しい自分が現れるのだ。
誰にも知られたくない、二度と思い出したくない記憶なのに、いつもどこかで思い出してる。そんな自分がもどかしくて仕方ない。

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