HEAD/phones~ヘッド・フォン~
 出発して二時間近くが経過していた。しかし、一向に着く気配がない。それどころか道の状態も酷くなっていて、意気込んでいた健太郎の顔は次第に不安な気持ちをあらわにしていった。

「…ここ、どこ?」

健太郎はノブオに聞いた。しかし、ノブオは何も答えない。

「もしかして…道に迷った?」

ほんの冗談で言ったつもりだったのだが。

「…みたいだな」

そう言ってノブオは前方を指差す。その先を見ると、通行止めのポールが立っていた。

「マジ?!」

健太郎達は行き止まりの前まで来て車を降りた。アスファルトだった道路はいつの間にか砂利道になっていて、周りには荒々しく伸びきった草が密集していた。まるでジャングルに迷い込んだようである。
砂利道の真ん中に置かれた長方形の板に、先程も見た通行禁止の文字が手書きで乱暴に書かれている。その先に道のようにつながる砂利が見えるが、狭くなっていて獣道のように木々や歯が生い茂っていた。

「この先行けるんじゃないか?」

ノブオは奥の砂利道を覗き込んでいる。

「これは…無理じゃないですかね」

「ノブオちょっと見てきて」

健太郎がそう言うと、ノブオはそそくさと車の中に戻って行ってしまった。その隣では優が車から降りようともせず、相変わらず本に熱中していた。

「…しかし、よく優は来る気になったよなぁ」

健太郎は陽助に言う。

「ほんとですね…」

「あんなにずっと読んでて疲れないのかな」

「好きなんですよ」

「好き、ねぇ…それにしてもノブオの奴」

「ちゃんと着きますかねぇ?」

「どうだろ」

「お~い!何してんだ、行くぞー」

ノブオが窓から顔を出して叫んでいる。

「あー、なんか頭痛い」

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