HEAD/phones~ヘッド・フォン~
…なんという事だ。道も分からない。地図もない。ノブオの性格を考えれば当然の結果かもしれない。もっと早くに、あの分岐点に戻った時に…いや、出発前に確認しておくべきだった。この状況をどうにかして打破しないと、野宿という事になるわけだ。それくらいで済めばいいが、最悪帰れなくなるかもしれないという事か?
そして、健太郎は最後の質問を試みた。

「…ガソリンは?」

「あ、やばいかも」

祈るようにして聞いた健太郎はその言葉に打ちのめされた。

「やばいって、ガソリン入れて来なかったのかよ!」

健太郎は呆れて声を荒げた。

「途中にあると思ったんだよ」

「お前って奴は…」

「なんだよ!俺が悪いのかよ!」

「なんでお前がキレんだよ!」

「ちょっ、危ないですよ!」

「バカ!後ろ向くな!」

「バカって何だ!運転してるのは俺だという事を忘れるな!」

「なに言ってんだよ…うわっ!」

道の状態が進むに従って荒々しくなってきており、至る所に大きな凹みがある為、それに合わせて車も大きく揺れた。不安材料は増えていくばかりだ。なんとか進んでいるものの、この道が正しいかどうかも分からない。全く見当がつかないのである。
僕達は何を頼りに進んで行けばいいのか、そんなの誰にも分かるはずがない。頼るものなんてないし、今となってはどこに進んでいるのかも分からないのだから。少なくとも健太郎はそう思っていた。
揺れる体を支えながら、健太郎はガソリンの残量を確認してみる。もうすでに十分の一くらい程しか残っていない。改めて自分の不甲斐なさを感じてしまう。

< 33 / 113 >

この作品をシェア

pagetop