HEAD/phones~ヘッド・フォン~
かなり古いものなのか、木で作られた立て札は半分が欠けており、周りの木々と同じようにつる草が全体を覆うように巻き付いている。まるで土から生えてきた植物のようである。そのせいでそこに書かれた文字は部分的にしか見る事が出来ないが、それでも十分に理解出来た。

「…注意」

立て札にはそれだけが大々しく書かれているようであった。
一体、何に対しての注意だろう。陽助はそう思ったが、探しているものとは関係なさそうなので引き返そうとした。が、立て札の下の草の中に目が止まった。この場所に不釣り合いなソレは、立て札よりも異様なものであった。

「どうしてこんな所に…?」

陽助は落ちているヘッドフォンを手に取った。まだ真新しく見えるそのヘッドフォンにはコードがついていない。

「誰かの落とし物?」

ヘッドフォンは少し温もりを持っているように感じた。それに、金属で出来ているように見えるのだが、握った指の跡が微かにつく程柔らかく感じられた。陽助は疑問に思いながらも、ソレを持って車へと戻って行った。

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