HEAD/phones~ヘッド・フォン~
 健太郎がそのまま座って待ってると、すぐに車が来た。そして、空いたスペースに車を止めると、ノブオと陽助が降りてきた。優は車内でまだ本に目を向けている。

「あいつ、ある意味すげーな」

ノブオは車の方を指差す。

「だろ?」

どうやらノブオも優のすごさに気付いたらしい。

「ところで、どうだった?陽ちゃん」

「何も見つからなかったですねぇ」

陽助はうつむき加減に答えた。

「そっか…」

健太郎はポケットから携帯電話を取り出してみた。予想通り圏外だが時計は表示されている。十二時四十三分。出発してからもう三時間以上経過していた。

「手がかり無しかぁ…広い道に出ればなんとかなりそうなんだけどなぁ」

健太郎は砂利の小石をつま先で蹴った。

「山道入ってかなりの距離来たからな、戻るにしても簡単じゃねぇぞ」

「お前が言うなよ」

健太郎がそう言うと、ノブオは車に寄りかかって腕組みをし、何やら考え込み始めた。

「どうした?」

「…なんか聞こえないか?」

「え?」

すると、ノブオの腹が大きく鳴った。

「…よし!昼飯にしよー!」

「何を考え込んでるかと思えば…」

「何をするにしろ腹が減ってちゃ上手くはいかんさ」

「…………」

「大丈夫。まだ昼だし時間はあんだからよ」

健太郎の沈黙にノブオはニヤリと返す。

「それより、まさる~!ずっと本ばっか読んでんなよ。こっちの方が頭痛くなってくんだろが」

「……ん?何?」

ここにきてようやく優は本から目を離した。

「…今の状況分かってる?」

車を降りてきた優に、健太郎はとりあえず聞いてみた。

「……腹減った。飯まだ?」

「な!そうだろ?」

ノブオが同じ人種を見つけて喜ぶ横で、健太郎はやっぱり感心していた。どんな状況でもマイペースぶりを発揮するその精神の強さに。

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