HEAD/phones~ヘッド・フォン~
木や葉なら周りにたくさんあった。しかし、湿り気を帯びているものばかりで、乾いたものを探すのに少し手間取った。それに長時間炎を保つ為には、大きな枝木も必要だった。それでも、この作業に優も参加していた事で健太郎の気分は少し良かった。
集めた枝や葉を一ヵ所に集め、持って来た新聞紙とライターで火をつけた。すると、すぐに勢いよく燃え出し煙がモクモクと空高く上がっていく。

「この煙を見つけて誰か来たりして」

ノブオはそんな事を言ったが、おそらく冗談だろう。もちろん、これで助かれば言うことはないのだが。
まだ遭難したと決まったわけではない。すぐ近くに民家があるかもしれないし、ノブオが言うように、もしかしたら煙を見つけて誰か来るかもしれない。その気になったら歩いて帰る事だって出来るかもしれない。けれど、健太郎の中では遭難したようなものだった。このまま山の中をあてもなくさまよい続け、誰にも見つけられずに食料が尽きて死んでしまう。そんな思いがどうしても浮かんでしまう。でも健太郎はどこかで自分がそれを望んでいるようにも感じていた。どうせ生きていたって。そんなあらぬ感情が再び沸き起ころうとするのを、ただ無意識に抑え込もうとしているのだった。

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