HEAD/phones~ヘッド・フォン~
このフロアはいくつかの部屋に別れているようだった。それぞれにドアはついていないが、分厚い壁で区切ってある。階段の前から左に三つ、それは並んでいる。ノブオはすぐ目の前にある部屋に入った。中には細長い机が右の壁側につけて置かれているだけだった。そして、その壁からは長いコードが垂れ下がっている。ライターの小さな明かりでも部屋全体を照らす事が出来たが、そのコードが何の為につけられているのか、ノブオには想像もつかなかった。
人の気配を探りながら残りの二つの部屋も見て回るがどれも同じような作りの部屋で、その使用目的は分からない。もちろん誰の姿もなかった。しかし、異様な雰囲気が漂っているのは感じる。誰かに見られているような感じが、この建物に入ってからずっとしている。それに二階に上がってくる前よりも、さらに体が重く感じていた。でも、それはもしかしたら気のせいかもしれない。暗闇の中に一人でいるせいなのかもしれない。人は目に見えないものに恐怖する、か弱い生き物だから。

「あいつら、どこにいるんだ?」

ノブオは三階へ続く階段の前に来ていた。そして、迷いながらも一段目に足をかけた。

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