HEAD/phones~ヘッド・フォン~
「ノブオと優はどこ行ったんだ?」

「いないですねぇ」

健太郎と陽助は草の中をさまよっていた。気付いたら二人して倒れていたのだ。わけが分からず、とにかくいなくなった二人を探して、身長よりも遥かに高い草をかき分け歩いていた。

「ここ…どこだろ?」

不思議と草の感触は軽く、手に刺激があまり感じられない。かき分けるというより、草が避けていっているようだ。
やがて二人は白い道に出た。それは白い砂で出来た細長い道で、久しぶりに美しい景色を見たような気がして少し安心した。二人がその白い道を辿って行くと、同じく白い色の建物にぶつかった。けれど、その白は美しいという印象を与えなかった。

「…こんな所に?」

健太郎はその建物を見上げた。前にある扉の他には何も見えない。白い壁には所々に黒いシミのようなものがあるだけで窓はなかった。

「あの臭いは何だったんだろう?…それに、ここは?」

健太郎は自分なりに考えようとしたが、頭がうまく働かない。何かに締め付けているような、そんな圧迫感が全身にあった。

「どう思う?」

「…分からないですねぇ」

陽助はどう思っているのだろう、と健太郎は気になったがそれ以上は聞かなかった。その代わりにぐるりと周りを見回してみる。しかし、見えるのは長い草と白い道と、その先に広がる黒い森だけ。

「…やっぱりここしかないよな」

観念して健太郎は扉に手を伸ばした。金属で出来ているのか、ひんやりと冷たくて全身が軽く震えた。

「行くよ!」

健太郎は自分に言い聞かせるように声を出すと、思い切って扉を引いた。

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