HEAD/phones~ヘッド・フォン~
扉の先には闇が広がっていた。外とはまるで別世界のようで、中の空気を吸ったら気持ち悪くなってきた。それでも健太郎は恐る恐る中へと足を入れたが、目が慣れてくるまでは動く事が出来なかった。闇の奥から何かが襲って来そうで、いつでも逃げられる体勢でにしてじっと待った。そして、次第に見えてきたのは白い影だった。健太郎の目の前に白い壁が立ちはだかっていた。

「あれ、なんだろ?」

健太郎は後ろから入って来た陽助に尋ねる。

「暗くて何も見えないですけど?」

陽助は身を乗り出して闇を凝視する。まだ目が慣れていないのだ。
健太郎は白い壁へと近づいて行った。すると、ドアのような輪郭が見えてきた。中に何かが潜んでいる事を想像すると怖かったが、力を込めてドアノブを掴むとゆっくり押した。そして、現れたのはさらに深みを増した闇だった。

---完全な闇。

その闇に溶け込まないように、健太郎は全身に力を入れたまま中へと入った。先が見えないので、すり足で少しずつ進む。その後から陽助が続いて入って来る。床にはなにか紙のようなものが落ちているらしく、足の下で妙な音を立てた。それが警告音のように聞こえ、二人はすぐにその部屋を出た。本当はこの建物自体から出たかったのだがなんとか堪え、ドアから続く白い壁をつたって横へ移動した。陽助は黙って健太郎の後をついて来る。
少し進むと壁がなくなった。壁に触れていた手が行き場を失い暗闇をさまよっていると、また壁に触れた。どうやら壁に穴が空いているらしい。それも人がすんなり通れそうな程の大きな穴である。しかし、よく見てみるとそれは穴ではなく、元々ドアがついていない部屋の入り口らしかった。
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