HEAD/phones~ヘッド・フォン~

---どんな生き物だった?どんな形でどんな色だった??

けれど、突然の事だったのでノブオの記憶には何も情報が残っていなかった。それだけに得体の知れない何かに対する想像は限り無く広がっていく。
すると、目の前の闇がぼんやりと歪み始めた。そして、それは姿を現した。ノブオと闇の間に白い影のように立っている。ノブオはその影の方にそっとライターの明かりを向けてみた。

「うわっ!!」

小さな明かりの中に写し出されたのは、白いワンピースを着た人の姿だった。しかし、それには首から上の部分が欠けている。

「誰?」

「えっ?!」

ノブオは聞こえてきた声に驚くと同時に不思議に思った。頭がないのに、どこから聞こえてくるんだろう?

「迷ってるの?」

いきなりの質問にノブオは戸惑った。怖いという思いはなかったが、奇妙な感じがしていた。この状況を自分が楽しんでいるように思えるのだ。でも、それは自分じゃない誰かのような気もする。そんな酷く曖昧な思考がノブオの頭を巡っていた。すると、白い影は宙を舞うようにくるりと回転した。柔らかい風がノブオの頬にあたる。

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