HEAD/phones~ヘッド・フォン~
「なんで優はここにいたんだ?」
「なんでって、俺にも分からない。このヘッドフォンをはめ…」
「あっ!それ僕のです」
黙っていたと思ったら、陽助は突然そう言って慌てて優の手からヘッドフォンを奪い取った。
「どうした?陽ちゃん」
「…なんでもないです」
そう言う陽助を優は厳しい目付きで見ていた。
「なんか気付いた事あった?」
健太郎は優に聞くが、
「……え?なんだ?」
何かを考え込んでいたらしくどうも様子がおかしい。
「なんか二人とも変じゃないか?」
「別にそんな事ない」
優は表情を変えずにそう言う。陽助はヘッドフォンを大事そうに抱えて黙っていた。
「それで、なんだ?」
「だから、ここはどこなんだ?」
「俺にも分からない」
「じゃあ、この建物は?」
「そんなの俺が知るわけないだろ」
「…見て回るしかないのか」
「でも、屋上から下りて来たけど、別に何もなかったぞ」
「え?屋上から?」
「そう、屋上から」
「この建物の中、全部見て来たって事か?」
「だから、そうだって言ってるだろ」
「じゃあ、ノブオはどこにいるんだ?」
「ああ…隣かもな」
「隣?隣って、建物はこれだけだろ??」
「この裏に隣接してあったぞ。もう一個」
「本当か?」
「ああ」
「気付かなかった…」