HEAD/phones~ヘッド・フォン~

健太郎は全然気付かなかった。外に出てもう一度建物を見ても分からない。どうやら二つの建物は全く同じ幅で建っているらしく、正面からは一つの建物にしか見えない。そう言えば、上の方は少し違った色に見えるような気もするが、言われなければ誰も気付かないだろう。

健太郎はまた長い草の中を歩いていた。
建物を横から見ようとしたが、ここからは草が邪魔して周りの景色は見えない。その為、健太郎は方向感覚を失いそうだったが、優は迷わず先へ進んで行く。見失わないようにその後をついて行くだけで精一杯だった。陽助は優と合流してから一言も話さない。ちゃんとついて来ているか不安になったが、健太郎は優の背中だけを見ていた。

「ここだな」

先の方で優の声がした。健太郎はその声を頼りに進むと、やがて草の世界から抜け出た。その後から遅れて陽助も飛び出して来る。

「ここか…」

三人はもう一つの道へ出た。さっきの道とは違ってこちらは普通の砂だ。そして、その先には白い建物がある。

「ノブオはあの中に…」

「おそらくな」

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